この記事を読んでいるあなたは、これからヨガを始めようと思っているか、またはもう既にヨガを始めているが、ヨガの目的をもう一度踏まえたい。ヨガの成り立ちについてもっと詳しく知りたいと思っているのではないでしょうか?
世界のヨガ人口は年々増加傾向にあり、2020年には20億人を超えたと言います。2020年の世界人口は約78億人、少なく見積もっても総人口の約25%、約4人に1人がヨガをしていることになります。この数はすごいと思います。
こんなにも人々を惹きつけてやまないヨガとはいったい何でしょう?健康法?ダイエット?癒し?呼吸法?修行?悟り?
私がヨガを始めたきっかけは「ダイエット」でした。通信教育の教材や、CD付きの本、カルチャーセンター、ヨガ教室などでヨガを習い、いつしか古典ヨガの「シバナンダヨガ」や、自分の「気づき」を重視する「クリパルヨガ」などを学ぶようになりました。
そこで知った事は、ヨガはエクササイズやフィットネスのような体を動かすだけのヨガだけではなく、人の意識を変えてしまうほどの力のあるヨガの考え方(哲学)や、その他にも様々なヨガの種類があると言う事でした。
ここでは、これからヨガを始めたい人、またもうすでにヨガを行っている人でも、まずはその起源や歴史を学んでみましょう。ヨガの起源や成り立ちを知ることで、あなたのヨガの世界がグーンと広がります。
ヨガってもともと何? なぜヨガをするの? 昔と現代のヨガって何が違うの?どんなヨガを選んで学びたいのかなど、ヨガをする目的がより明らかになり、たくさんあるヨガのスタイルから自分にあったヨガを効果的にさらに楽しく継続しやすくなります。
日本のヨガの始まりから現在までの歴史については、こちらで詳しく解説しています。
ヨガの起源
ヨガの歴史はとても古くはっきりとわかっていません。今から約4500年前に栄えたインダス文明のモヘンジョダロの都市遺跡から、座法をとり瞑想するヨガ行者のような姿が彫刻された印章が出土されました。この印章がヒンドゥー教の最高神シヴァ神の原型とされ、ここに暮らす民が何らかの儀式や瞑想をしていたのがヨガの起源と推測されています。

モヘンジョダロ遺跡で見つかった印章には、座法を組んで座る姿が見て取れます。
【インド文化へ引き継がれたインダス文明】
インダス文明を担っていたのは、現在、南インド地方に住むドラヴィダ人とされています。これは、インダス文字に記された文字が現在南インドに住むドラヴィダ人が使うドラヴィダ文字と重なることからも言われています。インダス文明滅亡後、後に北西から侵入してきたアーリア人に追いやられ、その後の現在まで南インドの地へ移り住みました。

現在のパキスタン、インド西北地域になります。
インダス文明の都市遺跡モエンジョダロ遺跡から豊作と再生を祈念する沐浴場としての「大浴場」そしてシヴァ神と原型と思われる印章が見つかりました。その後ヒンドゥー教で崇拝されるようになった牛、宗教的沐浴の風習、樹木信仰などの痕も残されており、それらがインド文化に引き継がれた様子がうかがえます。
ヨガの語源
ヨガの語源はサンスクリットで「ユジュ(Yju)」です。「結びつける」とか「つなぐ」「一体化する」という意味があります。
●紀元前1200年頃
最古の文献「リグ ヴェーダ」に「ユジュ」という言葉が初めて登場します。もとの「ユジュ」の意味は牛や馬に「軛(くびき)をかける」こと。軛とは、牛馬と荷台を繋ぐため棒状の木製器具のことです。
このころは「軍馬を戦車(二輪馬車)に繋ぐ」という意味で使われることが多く、ヨガの概念は戦争と密接に関わっていました。そこから派生した「ユジュ」という言葉は、その後「体と心と魂を宇宙(神)と結びつける修行法」として発展していきます。

牛の首の木製のくびき

くびき拡大図
●紀元前1000~500年頃
後期ヴェーダ時代になると、経典の中にバラモン司祭による祈りの中で「心を神々に繋げる」というヨガを示唆するような概念が初めて登場します。
●紀元前300年頃
『カタ・ウパニシャッド』(奥義書)には、霊的な修練としてのヨガの概念が書かれています。宇宙の根本原理に立った解脱への考え方と方法が追及され、座法や呼吸の制御、集中などの行法も解かれるようになりました。
ヴェーダについて
ヨガのルーツを理解するには、ヴェーダという言葉を知っておく必要があります。ヨガという言葉はヴェーダの中に初めて登場しますし、ヨガの知識及び人生を豊かに幸せに生きる知識がそこには散りばめられているからです。ヴェーダの理解を深めることは、ヨガを深く理解することに繋がります。
ヴェーダとは「知識」の意味です。ヴェーダは、古代のリシ(聖人)たちによって神(宇宙)から受け取られたと伝えられます。リシ達は、その宇宙から受け取ったアイディアやメッセージを音声変換し言葉として表したのです。それは長い間、人々によって口伝議論され受け継がれ後世にヴェーダ経典として記録されました。
●紀元前1200年頃から紀元前500年頃
インドでまとめられた一連の宗教や哲学の文献のことを指します。その内容は、神、自己、自然、宇宙秩序についての知識、社会規範、民族的行動、結婚、食べ物、健康、世界のあらゆる事に及びます。

ヴェーダ経典はサンスクリットの古い形のヴェーダ語で書かれています。ヴェーダは数千年前に書き留められましたが、これら経典の知識は、それらが記録されるずっと前から存在していました。
【ヴェーダ時代】
インド史において、バラモン教の経典「ヴェーダ」が成立した時代のこと。
大きく前期と後期時代に分かれる。
●「前期ヴェーダ時代」(紀元前1200 – 1000年頃)
●「後期ヴェーダ時代」(紀元前1000 – 前500年頃)
【ヴェーダの分類】
大きく「ヴェーダ」を4つに分類し解説します。「ヴェーダ」は、古代に失われた多くの学派の文献と現存する「ヴェーダ」と合わせると膨大になると考えられています。
ヴェーダは広い意味では4つに分類されます。
●サンヒター(本集)…中心的な部分。マントラ(賛歌、歌詞、祭祀、呪詞)により構成。
●ブラーフマナ(祭儀書)…祭式の手順や神学的意味を説明。
●アーラニヤカ(森林書)…人里離れた森林で語られる秘技。祭式の説明と哲学的な説明。
●ウパニシャット(奥義書)…ヨガ思想と深く関わる哲学的な部分。インド哲学の源流。紀元前500年ごろに成立。「ヴェーダーンタ」とも呼ばれる。ヴェーダの一番最後に書かれた文献で「ヴェーダの最後」の意味。
【サンヒター(本集)の4種のヴェーダ】
狭い意味では、上記のサンヒター(本集)の事をヴェーダと言い、以下の4種類があります。
●『リグ・ヴェーダ』
最古のヴェーダ。神々への韻文讃歌。インド・イラン共通時代の古い神話を収録。
●『サーマ・ヴェーダ』
「リグ・ヴェーダ』に材を取る詠歌(サーマン)集。インド古典音楽の源流。南インド主流の「カルナティック音楽」と北インド主流の「ヒンドゥスターニ音楽」のルーツとなる。またサンスクリット、音声学、文法学にも影響を及ぼしている。
●『ヤジュル・ヴェーダ』
神々への呼びかけなど。『黒ヤジュル・ヴェーダ』、『白ヤジュル・ヴェーダ』の2種類がある。
●『アタルヴァ・ヴェーダ』
呪文集。他の三つに比べて成立が新しい。後になってヴェーダとして加えられた。
バラモン教とヒンドゥー教
ヴェーダと深く関わっていたバラモン教とヒンドゥー教の関係についても知っておきましょう。
バラモン教は、古代インドの経典であるヴェーダを起源とするインド最古の宗教のことです。ヴェーダ教とも言われます。
ヒンドゥー教は、バラモン教とインドの土着宗教と結びつき、また仏教などに影響されながら派生しました。バラモン教で最も重視される宗教的な課題は、「輪廻(りんね)の繰り返しから離脱」する事でした。これは、仏教やヒンドゥー教でも同じです。
現代でもインドやネパールで10億人のヒンドゥー教徒がおり、そのほかの国も合わせると11億人とされ、キリスト教、イスラム教に続いて人口上世界に3番目に多い宗教とされています。
ヴェーダと深く関わっていたバラモン教は、仏教やヒンドゥー教にも影響を及ぼしました。ヒンドゥー教や仏教のルーツはヴェーダを起源としたバラモン教です。

バラモン教やヒンドゥー教で執り行われるホーマ(護摩)という儀式。供物を火中に投じ煙をを通じで天界の神々へ捧げて祈願する儀礼。日本の仏教の護摩焚きの原型。
ヨーガスートラ
●紀元後400年頃
バラモン教(インド哲学)の一派のヨーガ派により「解脱に至る行法」を解いた経典が「ヨーガスートラ」です。
ヨガはいろいろな思想や哲学、宗教が影響しあい、いくつかの流派に枝分かれした後、紀元後400年頃、インドの思想家であり文法学者であったパタンジャリによって、最も古い経典「ヨーガスートラ」がまとめられます。
古代より伝承されてきたヨガを、初めて理論的に体系化したもので、8段階の実践的なヨガの行法が記されています。これを実践することで「ヨーガ」=「三昧」=「解脱」に至ると説かれています。

ヨガの八支則
※現代ヨガのポーズ(アーサナ)中心のエクササイズ的なヨガについては記されていませんが、今でも「ヨーガスートラ」は、ヨガをする人たちのバイブルとして受け継がれています。
ハタヨガの大成
●1300年頃
その後しばらくの間、ヨガは密教化し修行法として伝承されていきますが、しだいに今までヨガの中心であった瞑想と座法に加え、アーサナ(ポーズ)と呼吸法(プラナヤーマ)で構成されたヨガの一流派であるハタヨガが大成していきます。
●1600年頃
インドの行者 スヴァ―トマーラーマ―によって、ハタヨガの解説、行法が詳細かつ体系的に記述された「ハタヨガ」の根本経典、「ハタヨガ・プラディーピカ」が完成されます。

片鼻呼吸法をする行者の絵
呼吸とポーズ(アーサナ)を合わせ、意識と身体を一体化させる「ハタヨガ」は現代ヨガの原型となります。
現代ヨガ
●1900年代
後に「現代ヨガの父」と呼ばれることになるクリシュナマーチャリアが、ポーズ、呼吸、瞑想で構成されたハタヨガの復活に貢献します。アーサナを呼吸と共につなげて「現代のヨガ」に繋がる「運動としてのハタヨーガ」の発展に幅広い影響をあたえました。
2人の弟子、S.K パッタビジョイス、B.K.Sアイアンガー師は独自のヨガスタイルを考案し、ヨガは世界へと広がりました。ハタヨガ、アシュタンガヨガ、アイアンガーヨガは欧米で絶大に支持され、それらを元にアメリカで発展し、新しいヨガスタイルが次々と生まれました。パワーヨガやビクラムヨガなどです。

●1990〜2000年代
ハリウッドセレブなどが実践していたことから1990年代に欧米で大ブームになり、日本でも2000年代になるとフィットネスクラブなどでヨガクラスが登場し、老若男女、自分に合ったスタイルのヨガをだれでも楽しめる健康法として認知されるようになりました。
国際ヨガデー
●2015年
国連においてインドのモディ―首相の提案により毎年6月21日を「国際ヨガデー」と制定されます。177カ国の賛同を得て採択された「国際ヨガデー」はヨガの恩恵について認識を高める機会とするとともに、世界中の人々がヨガを楽しみ、体、心、社会の健康を育む日となりました。
国際ヨガデーが制定されたことで、ヨガの知名度はさらに上がり、世界中のヨガ人口は増加傾向にあります。現代ヨガのエクササイズ的なヨガにとどまらず、古典ヨガやヨガ哲学を学ぶ人が増えています。昔は限られた人しか実践することができなかったヨガの秘儀なども開示される傾向にあり、インターネットやオンラインなどを通じて容易に学ぶことができる時代となりました。

●2020年
コロナウィルス感染症の世界的な蔓延のため、オンラインでの学習が通常になり、世界中どこにいても、気軽にいろんなヨガを学べる時代となりました。現代ヨガのみならず、古代からのヨガの知恵も気軽に学ぶことができます。
自分に合うヨガを選び実践し、ヨガの恩恵を最大限に受け取る事のできる時代となりました。
世界ヨガ年表
ここでは、ヨガの起源から現代ヨガまでの移り変わりの歴史を年表で見てみましょう。
| 紀元前2500年頃 | インダス文明に、人々は座法をとり何らかの瞑想や修行、儀式をしていた。 |
| 紀元前1200年頃 | ヨガの語源「ユジュ」という言葉が初めて、最古の文献「リグヴェーダ」の中に登場。 |
| 紀元前1000~500年頃 | ヴェーダ経典に「心を神々に繋げる」というヨガを示唆するような概念が初めて登場。 |
| 紀元前300年頃 | 「カタ・ウパニシャッド」により、霊的な修練としてのヨガ、座法や呼吸の制御、集中などの行法が初めて解かれる。 |
| 400年頃 | 伝承されてきたヨガを論理的に体系化した最も古い経典「ヨガ・スートラ」がまとめられる。 |
| 1300年頃 | アーサナと呼吸法で構成されたヨガの一流派「ハタ・ヨガ」が誕生。 |
| 1600年頃 | 「ハタヨガ」の根本経典「ハタヨガ・プラディーピカー」の完成。 |
| 1900年代 | インドにてヨガの科学的研究所、世界初のヨガ大学が開設。 |
| 1970年代 | 第一次ヨガブーム、アメリカのヒッピームーブメントの中で、若者中心にヨガが流行。 |
| 1990年代 | 第二次ヨガブーム、ハリウッドセレブを中心にフィットネスとしてのヨガが流行。 |
| 2000年代 | 世界各国でヨガが認知されるようになる。 |
| 2015年 | インドの首相 ナレンドラモディ―により提案された国際ヨガデーが毎年6月21日に制定される。 |
| 2020年 | 世界のヨガ人口は20億人を超える。英語圏、中東、アジア、中国、世界各国へ波及。 |
まとめ
ここまで、4500年前のインダス文明で瞑想する姿が彫刻された印章の発掘から、現在に至るまでのヨガの歴史を解説しました。
ヨガは数千年もの間、一部の修行者が至高の存在と合一するための行法としてありましたが、現在に至るわずか100年余りで西洋文化と融合し、今では世界中の誰でもが気軽にできる健康法としてのヨガへと急速に変化していきました。
現代ヨガは健康法として認知されることが多いですが、今も昔も人々の願いは人生を豊かに生きることです。心身を整え健康で幸せになること。それすなわち最高の自分になることです。そのためのひとつのツールがヨガなのです。
ヨガの起源、歴史や成り立ちを認識することは、ヨガの意味や目的を知ることに繋がります。数多くあるヨガスタイルから自分に合ったヨガを選び、ライフスタイルに合わせて、楽しく効果的に継続していきましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
日本のヨガの始まりから現在までの歴史については、こちらで詳しく解説しています。