この記事を読んでいるあなたは、これからヨガを始めようと思っているか、またはもうすでにヨガをやっていて日本のヨガの成り立ちについて興味があり詳しく知りたいと思っているのではないでしょうか?
世界のヨガ人口は年々増加傾向にあり、日本のヨガマーケット調査(2017)では、日本の総人口の12.7%もの人がヨガを行い、そのうちの8%は月に一度はヨガをしているという結果が出ています。2020年の日本のヨガ人口は1000万人を超えるといいます。
ヨガを始める理由は人それぞれだと思いますが、多くの人が「健康や美容の為にヨガを始める」のだそうです。
ではヨガとはいったい何でしょう?健康法?ダイエット?癒し?修行?
これからヨガを始めたい人、またもうすでにヨガを行っている人でも、まずはその起源や歴史を学んでみましょう。ヨガの成り立ちを認識することで、ヨガをする目的がよりはっきりとし、より効果的に楽しく継続しやすくなります。
インドから発祥したヨガの歴史はこちらで詳しく解説しています。
日本のヨガの始まり
・806年
平安時代初期に、遣唐使の留学僧としての空海が唐から帰国し、日本に初めて「瑜伽」(ユガ)という言葉を伝えました。空海は密教である真言宗を学び、京都の高野山に金剛峯寺 (こんごうぶじ)を建てたことで有名です。
空海の学んだ密教の中は「心の制御、統一をはかる修行法」の「瑜伽(ゆが)」がありました。「瑜伽」はインドのサンスクリットの「ヨガ」を漢字に置き換えたものです。これが日本の「瑜伽」ヨガの始まりとなりました。

密教と共に瑜伽(ゆが)を日本へ持ち帰った空海−平安時代
・1200年頃
その後鎌倉時代になると栄西や道元が坐禅を組んで悟りを開く「禅宗」を広めます。禅宗を通じてヨガの教え(ヨーガスートラ)が日本へと伝わりました。
ヨガの起源と歴史を参照してください。
「禅」は、「心が動揺することのなくなった状態」を意味します。サンスクリットでは『ディヤーナ』といい『ディヤーナ」の音写が「禅那」なりました。そして「禅那」の略語が「禅」です。「禅那(禅)」に至る真の教えを説くのが「禅宗」です。
近代以降のヨガ
ここからは、明治時代以降の日本のヨガを牽引され現代日本のヨガの土台を築かれた「主要人物ご三方」をご紹介します。以下の方々です。
●中村天風・・・実業家、思想家、ヨガ行者 / 「心身統一法」を説く
●沖正弘・・・戦後の草分け的ヨガ指導者/ 「沖ヨガ」の創設者
●佐保田鶴治・・・インド哲学者/ ヨガの最古の経典「ヨーガ・スートラ」初翻訳・解説
それぞれの方々について解説していきます。
中村天風「心身統一法」− 1919年
明治時代になると、実業家、思想家、ヨガ行者であった中村天風により「心身統一法」が説かれるようになります。中村天風は、日露戦争の時にスパイとして活躍しましたが帰国後、当時は不治の病とされた肺結核を発症し心身共に衰弱します。人生の心理を求め、欧米へと旅立ち、有名な哲学者や宗教家を訪ねますが答えは得られず帰国することにします。
その帰路でヨガの聖者にであい、ヒマラヤで2年半ヨガの修行をし病を克服します。帰国後に自分の体験をもとに人間生命の本来のあり方を説いた「心身統一法」を確立しました。「心身統一法」は瞑想法・呼吸法・養生法・運動法・精神能力開発法などヨガに通じる行法が組み込まれています。

中村天風
沖正弘「日本ヨガ協会」− 1958年
戦後の草分け的ヨガ指導者でもある「沖ヨガ」の創設者である沖正弘が「日本ヨガ協会」を設立します。幼少期から病弱でありながらも、青年期は、軍の特務機関員として中東、インド、アジア各国へ赴き、東西の医療法、宗教及び修行法を学びます。
戦後は平和活動家として貢献し。1951(昭和26)年、ユネスコ派遣奉仕員としてインドへ赴きヨガに出会いヨガ哲学、行法を学びます。日本に帰国後は、インド古典ヨガに東西の宗教や修行法、日本の武道、芸道、東洋医学、民間療法などを組み合わせた「求道ヨガ」とも呼ばれる「沖ヨガ」を確立しました。
アサナ(いわゆるヨガのポーズ)のみでなく、心、身、食、息、生活、環境のすべてを改善し、心身のバランスを回復し、自己能力を開発するヨガです。「日本ヨガ協会」を創設し、第一のヨガブームの火付け役となりました。

沖正弘
佐保田鶴治「解説 ヨーガ・スートラ」− 1966年
インド哲学者の佐保田鶴治が、ヨガの最古の経典「ヨーガ・スートラ」を日本で初めて翻訳・解説しました。
佐保田鶴治は若年の頃から虚弱体質で悩み続けていましたが、還暦を超えてからヨガに出会いめきめきと健康体になります。
ヨーガ道場を開設し、ヨーガに関する著書を多く執筆しました。その中でも、ヨガの最古の経典「ヨーガスートラ」を翻訳しました。今でも多くの日本のヨガ実践者にとって古典ヨガの学びを深めるための教本として読み継がれています。
■ヨーガスートラ本の表紙

解説ヨーガ・スートラ

佐保田鶴治
【ご三方の功績と共通点】
このように、近代以降の日本のヨガを牽引されてきた主要人物ご三方をご紹介しました。
この後1970年代の日本では第一次ヨガブームが起こります。ご三方の共通点は、共に体に「虚弱」や「病」をもたれていたことです。医療の発達していない時代に、病や身体の苦しみをどのように克服するか、肉体と精神と魂と向き合っていたことが垣間見えます。
ご自身の体験をとおして、強い使命感をもち、人々を苦から救い、幸せになる手助けをするために情熱を注がれた方たちです。近代以降のヨガの土台を築いた方たちの功績とその恩恵によりいまの日本のヨガがあるのです。
ヨガブーム
これから1970年代の日本の第一ヨガブームから今に至るまでの50年間の経緯についてお伝えしていきます。
・1970年代【第一ヨガブーム】
沖正弘氏のアーサナ(ポーズ)だけのヨガではなく生活のすべてのバランスを整え、自自己能力を開発し「自分とは何か」を探求するヨガ「沖ヨガ」が火付け役となります。
・1980年【第1回国際総合ヨーガ世界大会開催】
健康法としてフィットネス界にヨガが進出し、美容や健康の為のヨガが全世代へ広まるきっかけとなる。
・1990年【流行の最先端】
ダイエットや健康・自然志向が高まるなかファッショナブルなエクササイズとして若い女性を中心に人々の生活に取り入れられる。
・1995年【ヨガ冬の時代】
オウム真理教の地下鉄サリン事件によりヨガイメージは一気に下がり、ヨガ冬の時代に入ります。教団が、瞑想をしていたり、聖音オームなどヨガ用語を使っていたためヨガが嫌われるようになる。
・2000年代【第二次ヨガブーム】
オウム真理教の事件が人々の記憶から消えていくのと重なり、欧米セレブを中心に広がりを見せていたヨガブームが日本にも伝わります。そのライフスタイルに憧れる若い女性中心に再びブームが起こります。
ヨガは美容や健康法としてだけでなく、精神的な豊かさも得られるため、セルフコントロールのできる魅力的な女性のライフスタイルとして人々に愛されるようになります。
呼吸と動作を連動させ、流れるように複数のポーズを展開する「アシュタンガヨガ」と、体軸と骨盤矯正に重点を置く「アイアンガーヨガ」ベースにした、現代のヨガと呼ばれる「パワーヨガ」というジャンルが入ってきたのもこの頃です。
・2004年【ヨガフェスタ開催】
日本最大級のヨガのイベント「ヨガフェスタ」の第1回目が開催されます。流派を超え、講師陣、ヨガ愛好家が交流しヨガ業界をさらに活性化させ影響を与えました。
・2010年【ヨガの認知度の向上】
日本のヨガ人口が100万人超え、ヨガの認知度は上がり人々の生活に根づいていきます。
・2020年【今なお広がり続けるヨガ】
日本のヨガ人口は1000万人を超えます。現代人の体型やライフスタイルに合わせて進化した現代版ヨガが次々と派生しています。ヨガの人口増加に伴い、アーサナ(ポーズ)や瞑想のみならず、古典ヨガやヨガ哲学などを学ぶ人々も増えています。またオンラインの普及により、様々な種類のヨガが手軽に学べる環境となっています。
日本のヨガ歴史年表
ここでは、ヨガがどのように日本に普及・変遷していったのか見てみましょう。
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806年 |
平安時代に中国の唐より瑜伽(ゆが)という言葉が伝わる。 |
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1200年頃 |
鎌倉時代に栄西や道元が「禅宗」広め、それを通じてヨガの教えが伝わる。 |
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1919年 |
実業家、思想家、ヨガ行者であった中村天風により人間生命の本来のあり方を説いた「心身統一法」が説かれる。 |
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1958年 |
戦後のヨガの草分け的指導者ある「沖ヨガ」創設者の沖正弘が「日本ヨガ協会」を設立。 |
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1966年 |
インド哲学者の佐保田鶴治が、ヨガの最古の経典「ヨーガ・スートラ」を翻訳・解説。 |
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1970年代 |
初めてのヨガブーム。エクササイズ、美と健康のためのヨガが一般的に広まる。 |
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1980年 |
第1回国際総合ヨーガ世界大会開催 。フィットネス、美容や健康の為のヨガが全世代へ広まるきっかけとなる。 |
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1990年 |
ダイエットや健康・自然志向が高まるなかファッショナブルなエクササイズとして「時代の最先端」を行く若い女性たちを中心に人々の生活に取り入れ始める。 |
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1995年 |
オウム地下鉄サリン事件により、「瞑想」や「聖音オウム」「ヨガ」という言葉が嫌われるようになりヨガ人口が激減する。 |
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2000年代 |
米国のマドンナやハリウットセレブ中心にヨガブームが起こり、日本にも伝わり若い女性を中心に大ブームとなる。 |
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2004年 |
日本最大級のヨガのイベント「ヨガフェスタ」の第1回目が開催される。流派を超え、講師陣、ヨガ愛好家が交流しヨガ業界をさらに活性化させ影響を与えた。 |
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2010年代 |
日本のヨガ人口が100万人を超え、人々の生活に根づく。 |
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2020年代 |
コロナ感染症が大流行。オンラインの普及、どこにいてもヨガを学べる環境になる。日本のヨガ人口は、1000万人を超える。 |
●まとめ
ここまで、平安時代から、現在に至るまでの日本のヨガの歴史を解説しました。
日本では、ヨガは1000年以上もの間、一部の修行者のための行法としてありましたが、近代以降、中村天風、沖正弘、佐保田鶴治などの功績とその恩恵により現代の日本のヨガの土台が築かれます。
その後、現在に至るわずか50年余りで、欧米で広がったヨガブームの影響を受け、日本中の誰でもが気軽に楽しめるスタイリッシュな健康法としてのヨガへ急速に変化していきました。
最近では、ファッションや美容、エクササイズとしてのヨガだけでなく、瞑想やヨガ哲学などを学ぶ人も増えています。オンラインの環境も整い、様々な種類のヨガがいつどこに居ても手軽に学べます。
ヨガは健康法として認知されることが多いですが、今も昔も人々の願いは「人生を豊かに生きること。心身を整え健康で幸せになること。最高の自分になること」でした。そのためのひとつのツールがヨガなのです。
日本のヨガの歴史や成り立ちを認識することで、自分が行っているヨガのスタイルの意味や目的がよりはっきりとしてきます。また、多種多様なヨガスタイルの中で自分に合うヨガは何かを選ぶことができるようになるので、自分のライフスタイルに合わせて、より楽しく効果的に継続して行うことができるようになります。
最後までお読み頂きありがとうございました。
インドから発祥したヨガの歴史はこちらで詳しく解説しています。